那覇家庭裁判所平良支部 昭和61年(家イ)73号 審判 1987年4月30日
申立人 中森昭夫 外5名
相手方 平田敏夫
主文
本件申立てをいずれも却下する。
理由
第1申立ての趣旨及び実情
1 申立人らは、父平田一茂(以下「一茂」という。)と母中森トシとの間の子である。相手方は、一茂の弟である。
2 一茂と中森トシは、婚姻届は出していなかつたが、通常の夫婦と同様の生活を営んでおり、申立人らも、自分たちが戸籍上いわゆる私生子となつていることは知らなかつた。
3 一茂は、昭和44年6月に死亡している。
4 そこで、申立人らとしては、人訴裁判をする費用もないので、審判の理由中で真実の身分関係を明らかにしてもらいたいと希望し、「申立人と相手方との間に叔父関係が存在することを確認する。」旨の調停・審判を求める。
第2当裁判所の判断
1 関係戸籍謄本によれば、一茂は父平田亀雄と母マツとの間の長男で、相手方はその五男であり、また、申立人らはいずれも母中森トシの非嫡出子であると認められるところ、一茂は昭和44年6月11日に死亡しているが、これから生前に認知の届出がなされた事実は認められず、そのほか、一茂が申立人らの出生届をしたなど、認知と同一の効力を発生させるに足る事情も見当たらない。
2 ところで、非嫡出子と父との間の法律上の父子関係は、認知によつて初めて発生するものであり、両者の間に自然血縁的な関係があるというだけでは足りない。本件においては、上記のとおり一茂が生前に申立人らを認知した事実はなく、また、一茂が死亡してから既に民法787条所定の出訴期間も経過しているから、申立人らと一茂との間に法律上の父子関係は存在しない。
そして、上記のとおり一茂と相手方とは兄弟の関係にあるが、申立人らと一茂との間に法律上の父子関係が存在しない以上、申立人らと相手方との間にも法律上の親族関係はないことになる。
3 一方、法律上の関係がないのに父子関係の存在することの確認を求める申立ては、自然血縁的な関係の存在の確認を求めることになるので、不適法と解されているが、――仮に叔父と甥・姪のような派生的な親族関係の存否の確認を家事審判法23条の手続の対象とすることができるとしても――、同様に、法律上の親族関係がないのに自然血縁的な関係の存在の確認を求める申立ても、不適法というべきである。
4 したがつて、本件申立てはいずれも不適法ということになるから、一茂が申立人らの事実上の父かどうかなどの点に立ち入るまでもなく(なお、裁判所としては、申立てが不適法であることが明らかである以上、このような点について調査を行わせ、あるいは、事件を調停委員会の調停に付することはできない。)、これらを却下することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 河邉義典)